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新田緑道(工業の道)を歩く(写真はこちら)

 余り人には知られていないが、ユニークな緑道がある。市営地下鉄新羽駅を降りて、鶴見川の方向に進み大きな交差点を渡ると直ぐに脇道がある。この脇道が新田緑道である。港北産業道路が緑道を分断しているが、初めに北新横浜方面の道を歩くことにする。
 この辺は中小織り交ぜた工場が集積している地域である。緑道の両脇は工場ばかりで人家は見えない。どうやらここはこうした工場から出る工業排水のための小川があったようだ。そこを埋め立てて上を緑道にしたのだろう。地下には排水パイプが埋まっていることだろう。
 この緑道の特色は、工場で老朽化したり、時代遅れになった旋盤やフライス盤等々かつてはモノ造りの主役が役目を終えて、モニュメントとして第2の日の当たる場所を得ていることだ。
 道に入ると直ぐに巨大な機械が目に飛び込んでくる。(写真1)こういうマシンはこれから歩くうちに数々お目にかかることになる。非常に残念なことは、この緑道が単なる機械がアクセサリー化している点だ。それぞれの機械にはそれぞれの歴史と使命があったはずだ。故事来歴ではないが、そうしたいわく因縁を示す標示板が不足している。小学生の遠足にここを選ぶなら、このままでは専門のガイドが必要になる。ユニークさをアピールする絶好の機会を自ら放棄している。前回紹介したフランス山公園を歩いた後では、特にそういった点が欠けていると痛切に感じた。かつて生きて活動ししていた機械は単なる飾りにしては申し訳ない。後世に伝える何らかのメッセージを持っているはずだ。
 冒頭に苦言を呈してから散策を続けよう。
 次にくる機械は燃料を燃やし稼働する機械らしいが、大きな体は道の片隅で縮こまっている。(写真2)道を進むと、パイプを加工して平均台のような構築物がある。(写真3)これはアイデアで作った腰かけかも知れない。目の前のコンクリート造りの壺のようなものは両端を切り取って、子供がくぐって遊べるようにしてある。想像するに、これはどうやら灼熱した鉄を流し込む道具だったのかもしれない。次は道の真ん中にこんもり盛り上がる得体のしれないUFOのようなもの、オブジェのようであるが、フライパンの底を張り付けた円形の皿は工場で使われたものなのか、創作なのかはっきりしない。(写真4)やっと素性の分かる機械にお目にかかれた。(写真5)これはハープレスと言って金属を打ち抜いて電気製品の部品を作っていたと説明がある。寄贈(有)品川製作所とある。
 次はコンプレッサー(有)本間製作所寄贈とある。(写真6切抜加工済)こうした標示板は元々寄贈された機械全部に付いていたのかもしれない。取り付け方に問題がありそうだ。それにしても抜き去られたとすると結構罪なことをする人がいるものだ。公園はみんなのもの大切に守ろう。
 公園の中にある休憩所はパイプをうまくあしらい、柱は真っ白な「こけし」のような形をしている。(写真7)このような休憩所は新田オリジナルかもしれない。
 ちょうど中間地点に第2の入り口がある。(写真8)スマートさのかけらもない無骨で不愛想な顔をして人を迎え入れる。まるで旋盤を回し続けて年老いた職人の姿を思い出させる。ここにも同じような機械のモニュメントがある。ベンチも同じスタイルだ。(写真9)
 次にお目にかけるのが、トップを飾る赤いリベットである。こんなでかいネジをどこに使うのだろうかと思ってしまう。椅子替わりに使えるほどだ、ごつごつして冷たいのを覚悟の上の話だ。次、大口を開けたピンクの化けモノ(写真10)微かに読み取れるskate archivesの文字、ひょっとして外国生まれ。上に板が敷いてあるので、こどもの遊具になっている。次にお目にかけるのがさっぱり訳の分からない代物。いったいどんな所で使われていたのだろう。この公園ナゾナゾ遊びをしながら歩いているようで、???の足跡ばかり残る。(写真11)
 機械のモニュメントを抜けるとコンクリート製の舗装道路になる。ここにも工夫がこらされている。道の両端に空色の鉄板を四隅をリベットで止めたデザインが目を引く。(写真12)道の出入り口は鉄製の柵を交互に組み合わせて道路から遮断しているが、中では自転車がスイスイ走っているのが目立つ。車が走らないし、安全で空いているからだろう。(写真13)しばらくすると、また変な機械に行き当たった。(写真14)SHIDAというメーカー名が読み取れる。これは掘削機?それともロボット?クウェッションがまた一つ加わった。
 道の途中に大きなコンクリート壁に緑色の塗装した、ボールをぶつけて遊ぶ場所がある。不思議にも地下鉄が高いところを走っている。この運動広場特筆に値する。テニスコートほどの広さがあり、昼休みに工場の職人さんが休憩時間を利用して運動するにはもってこいの場所だ。公園の中にこのような空間を作るなど、緑道設計のコンセプトからは外れているかも知れないが、訳の分からないところがこの緑道の味わいと考えれば、納得できる。(写真15)この辺が終点で、この先は200mほど両側を生垣で囲んだ道が北新横浜まで続く。これはごく最近開通したもので、ただの道。(写真16)
 新田緑道の綱島寄りは、遊水路になっている。そこでは多分近所の母親が、浅い遊水路の中でこどもを遊ばせている。この時の動画はまだ夏の暑い盛りで、こどもは嬉々として水と戯れていた。アブストラクトな人工遊水路だから目を離さなければ安全な場所である。これは先に書いた新しく北新横浜方面に向かう遊歩道にも導入すれば、そして、工作機械の故事来歴をしっかりとした標示板で案内すれば、素晴らしい散策ポイントとして自慢できると保証したい。

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