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八分の力

 腹八分という言葉がある。満腹に比べ体への負担は当然軽くなり、理に適っており健康にも良い。
 ずっと昔の話で、戦時中で極端な食糧難の時代であった。私は疎開しており、母の実家に身を寄せていた。 たまに父が食糧を横浜から運んで来てくれた。たまたまそんな幸運な日に会い、しこたま食べる機会に恵まれ、腹がパンパンになり苦しくて、おろくろに連れられて田舎の夜道を腹ごなしで歩かされたことを克明に憶えている。昭和20年6月頃の話だ。
 それから70年近い年月が過ぎ去り、今では飢えなどは遠い記憶の彼方にある。食事制限というか、食事の管理が大切な昨今は、腹八分は当たり前、六七分でも苦にならない。そのせいか、体重も最盛期より7キロ程度減った。身長対比では標準的といったところに戻った。
 歳を重ねてこの歳になると、食に限ったことではない。体力・気力についても同様だ。
 野球の投手と比べるのはどうかとも思うが、大体ベテランと言われるまで現役を続ける選手は、いつも全力投球し続けるわけではなく、力の配分を考え緩急自在の配球で試合を作る。それが40歳過ぎても頑張れる要因である。極めて少ないが存在する。
 ここから学べることは、歳相応に全てには全力は尽くさないことだ。八分の力配分が大切だという事を言いたい訳である。
 日常細事のコラムも既に65話になる。大体週二回のペースだから、毎日構想を練っている気がする。他にも色々取材を伴うものもあるから、殆ど暇なしと言ってもよい。では、全力で取り組んでいるかと言えば、そうでもない。むしろ散歩のように、ゆっくりと、時には休みながら書き上げている。楽しみながら作業しているのだから、疲れることもないし、趣味だから締め切りの心配もない。
 大体八分の力配分を心がけている。力を抜いた分、周りに目が向くので、新しい発想も生まれてくる。よく継続は力なりと言われるが、こんな調子で息長く、記す、撮る、組み立てる作業を続けていく積りだ。

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