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情報の二面性

 今、国会では国の外交・安全保障政策の中核となる「国家安全保障会議(日本版NSC)」創設のための準備が始まっており、11月中には成立させ、直ちにNSCを発足させる構えを示している。このNSCで取り扱われるのは、防衛・外交に関わる機密情報が中心となる。
 そこで今回「情報」をテーマにして考えてみる。情報という言葉は一つの単語として表現しているが、英語では二つの単語で分けて表現している。図に示すようにInformationとIntelligenceという単語で使い分けている。Informationを公開情報、Intelligenceを非公開情報と仮に命名する。
 nimensei氷山に例えると公開情報は水面上に見える部分にあり、非公開情報は水面下にある。
 アメリカのCIA(中央情報局)は、非公開情報収集機関の代表的存在である。CIAのIはIntelligenceの略である。情報収集機能の高さがトップレベルにあるCIAは兎角悪者の代表みたいに言われているが、情報戦略が国家の命運をも左右するということから、大統領の直轄機関として闇の力を保持している。日本人は安全は当たり前のように守られているかの如き感がするが、テロの危機にさらされる国にとって防衛上の機密情報は時々刻々更新され、それを守るために多くの犠牲を払っていることも十分考えられる。
 それでは、公開されている情報が役に立たないと言えば、決してそうではない。丁度今でも台風に対して警戒を促す気象情報は生活に不可欠な情報である。同様に株価などの統計情報、新聞やTVのニュース、交通機関の時刻表など多くの公開情報は、日常生活では欠かせない情報である。
 金脈のような非公開情報は、普通の人間の手の届かないところにあり、また触れたくもない禍々しいものかもしれない。それでは、公開情報の中から金脈を掘り当てることはできるのだろうか。不可能ではないかも知れない。人間の頭脳はコンピュータには負けない部分が残されている。それは、新しい物を創造する能力である。特に言語をつなぎ合わせる能力、すなわち作文能力は、コンピュータが人間に対抗できない分野だ。もしコンピュータがその分野で人間を凌いでしまえば、芥川賞も直木賞もみんなコンピュータに持っていかれてしまうことになる。人間の知性は頭の中のデータをフィルターにかけ、分析し、新しい文脈を探し出し、オリジナルの文章を作り出す。それは先に述べた新しい物を創造する能力の一つである。
 それでは、情報の二面性と本文との関わりは何かというと、端的な例を上げるなら、情報の操作である。よくぼろ儲けできる話に釣られてインチキ商法に引っ掛かり身ぐるみはがされたという話を聞く。先ず、「耳寄りな話があります。ここだけの話、絶対秘密を守って頂ければあなたに大金が転がり込むようになります」などと持ち掛ける。聞かされた人から見れば、これは金脈のような非公開情報がわが身にもたらされたことことになる。いくら投資雑誌や日経新聞の株価欄を睨んでいても、そう簡単には大金に変える知恵は浮かんでこない。それは公開された情報に基づくもので、単なるデータである。ところが怪しい話は、いかにも裏の情報に通じ、恰もタイムスリップして競馬の着順を知っているから、「何番と何番の番号の馬券を買いなさい必ず当たりますよ」と持ち掛けるようなもので、極めて具体的に極秘情報らしく見せかける。そんな話に乗る方もどうかと思うが、相手の話術がうまいのか、自分の欲の皮の方が強いのか、結果は騙されることになる。
 結局、情報とは自分の頭の中に蓄え、自分独自のフィルターを通さなければ生かすことはできない。情報は誰にでも均等に分け与えられる。生かすも殺すもそれは使う側の自分自身の洞察力・観察力(フィルター力と言ってもいい)を高めるほかに道はない。インテリと呼ばれる人は、それを成し遂げた人のことを指しているのかもしれない。

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