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漢字の楽しみ方(その1) 

 日本で今使われている文字表現は、ひらがな、カタカナ、擬音交じりで非常に豊かである。今回もいくつか例を上げて、偏と旁の組み合わせでどのような状態を示すことになるのか考察してみる。
 日光の東照宮にある木彫りの額に、「見ざる」「言わざる」「聞かざる」の三猿があるのは、有名で日光を訪れた人は一度は目にしたと思う。
 実は今回はこの三猿には関係ない話題である。「見る」は目、「言う」は口、「聞く」は耳という、顔に付いている三つの器官については、関連する言葉が沢山ある。
 目、口、耳という語句から派生する多くの漢字は、人間の肉体的活動と密着していることが分かる。もともと漢字はその文字が示すように、漢(古代中国)から渡来した文書や経文が元になっている。
 日本人が伝来の文化を、我が国流の合理性に基づき独自のものに変えるという話を前にもしたが、漢字も同様で単一では分かり難いものが、組み合わせと表現法でスッと飲み込めるものになる。
 最初は、目偏であるが、いくつか紹介して見よう。
 「眩」(ゲン)は目がクラクラして見えないことを意味する漢字である。
 「眠」(ミン)は目をつむってグッスリまたはウツラウツラと眠ることを意味する漢字である。
 「瞠」(ドウ)は目をカッと見開いて驚いたり、呆れたりする様を意味する漢字である。
 次は、口偏である。
 「吸」(キュウ)は口から息や飲み物ををスーと吸い込む意味の漢字である。
 「吹」(スイ)は口で息をフ~と吹き出す意味の漢字である。
 「呼」(コ)は口から大きな声でオーイなどと呼びかける意味の漢字である。
最後は、耳偏であるが、これは表現が難しい。
 「聴」(チョウ)は耳をそばだててジッと聞くという意味の漢字である。
 「聰」(ソウ)は耳が良く通ることで、さといとか分かりが良い状態を意味する漢字で、擬音は見 つからなかった。
 「職」耳でよく聞いて、識別することから転じて、よくわきまえている仕事の意味を示す漢字である。
 調べていて耳偏の漢字は意外と少ない。聞くや聲のように別の組み合わせ方でできる漢字の方が多い。
 このようにほんの一例を示したが、語源や類語を調べてみると、日本語の表現力の豊かさには改めて驚かされる。外国語で日本語の意味を翻訳する人は、日本のしきたりや人間関係での呼び方など、複雑な要素を含んでいるので、相当苦労するだろう。

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