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記憶から記録へ

 人は誰でも年を取れば、忘れっぽくなる。無論例外はあるが、大概の人はそれは定めのようで、認めざるを得ない現象なのだ。
 酒飲みによくあることだが、酔うほどにくどくなる。それも昔ばなしを何回も繰り返す。本人は初めて話すように得々としている。周りの者はまたかと思うが、ふんふんと聞いている。周りの者も始めて聞く話だと感じているなら、それはそれで和やかな席になる。人は昔のことはよく覚えているが、最近のことは、夕べの食事に何を食べたかも忘れてしまう。
 私も例外ではない。そこで、記憶に頼ることはしないように、記録に頼るように切り替えた。日常生活な代表的な例を上げると、出金記録で、お小遣い帳みたいなものだ。これは私に限らず、結構多くの人が日記帳代わりに使っているようだ。日記と言うと何か構えてしまうが、お金の使い方を記録するのは、レシートさえ残しておけば、後でも記録できる。行動にはイメージが付きまとうので、単にお金の記録だけでなく、その時の記憶も蘇るものだ。
 私の場合は、その他にも色々メモを取っている。行動記録とか、歩いた歩数とか、思いついたこととか、それぞれ別のツールを使って残すことにしている。全て電子化している。前にも紹介したが、iPodは金銭帳(おカネレコ)と行動記録(瞬間日記)というアプリを使っている。歩いた歩数は、携帯電話に付随する機能にある。そして、一番役に立つのが、手書きの電子ノートで、何でもかんでもメモる道具だ。
 そうして集めたデータは、好きな時に取り出せるようにデータベース化している。データベースは、私にとって物書きの部品のような存在である。電子ノートもアナログとデジタルが結び付いた一種のデータベースと言うことができる。ジャンル別に仕訳してあるので、ネタ元を見つけるのはそれほど苦労しなくて済む。
 更に、高度なデータベースは、クラウド(Cloud)の活用である。私は、Evernoteというアプリがそれに該当する。
 物を覚えるには、かなりのエネルギーが必要だ。更に、そこから覚えた物を引き出すには、更なるエネルギーを要する。そういう事に残り少ないエネルギーを消費するより、電子的に保存されたデータベースを活用する方が、労力を使わないし、効率もよく、正確である。
 データを探し出してしまうと、不思議なもので、付随して過去の記憶が蘇ってくることがある。記憶は失われるのではなく、奥深くに仕舞われているものだと言う事が分かる。
 最近のことを忘れてしまうのは、毎日同じリズムで繰り返される事柄は記憶に残し難いせいである。何か動機付けのようなインパクトがあれば、新しい事でも記憶に残るものだ。例えば、親父が娘の結婚式のことは一生忘れないというように。
 先にも述べたように、忘れるのを前提に、何でもメモしてしまう。いい例が、本屋で面白そうな小説を見つけたとする。何日か経ってしまうと、書名も著者も綺麗に忘れている。その時ちょっとメモしておけば、後悔しないで済む。
 データも「塵も積もれば山となる」の喩えのように、今では膨大な量になっている。他人から見れば屑でも私にとっては宝の山である。整理整頓がいまいちであるので、データを取り出すのにしばしば苦労するが。特に頻繁に使う電子ノートは、ノート名となるタグが多くなること、削除をマメにやらないので、メモを探し出すのに苦労している。
 データベース機能でも優れているのは、先に紹介したCloudの一つであるEvernoteと言えよう。私は自分のPCの共有サーバーとして使っているので、有料版であるが、無料版もあり、十分役に立つ。契約は年契約であるが、1回契約すれば、全ての自分のマシンから操作できるのが気に入っている。電子ノートで下書きしEvernoteで清書する。そのデータは、コピーしてホームページで使っている。
 こうした、直ぐには必要でもないデータを電子化しておくことで、今、私はこうして物を書くことが出来るのだ。これは記憶だけに頼っていては、無理なことである。
 また、メモしたデータをそのまま使うことは無い。必ず辞典などの参考文献に照らして、正確性の維持や肉付けを行ってから発表する。この一連の作業過程で、本を読むという習慣が守られ、脳も活性化しているのではないかと思っている。
 

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